空から降りてきた不思議な子供と月夜の草原でかくれんぼ。
ってどこのジュヴナイルSFですかああああっ!!

弱い! こういうシチュエーションってほんっっっと弱い!!
語り手が元述本人だからなのか? このリリカルな味付けはどうなのよ。
全編に渡って殆どの背景に登場する三日月がとっても象徴的。月が見ている……ってあんたBL小説じゃないんだから。
しかしラストは微妙に後ろ向きなような……でもある意味いつもの元述にホッとするような……??
つまり元述はいつも後ろ向きって事なの?(ダメ解釈)
とりあえず、すぐ「もういい」とか言っちゃう投げやりなところを直した方が良いと思います。君は。

つか、坊ちゃまときたか。元述坊ちゃまときたか。しかもお兄ちゃんっ子か。剣はお兄ちゃんに教わりましたか。
一晩中お外でかくれんぼして朝帰りしちゃうような兄弟って……!
うふふアハハほーら見つけたぞぉとか、じゃあ今度は兄さんが隠れてね、よぉーし兄さんはかくれんぼの天才だからな、簡単には見つからないぞ〜なんつって、真っ暗い森でなかなか見つからなくてそろそろ泣きそうな弟に、兄さんわざと音を立てて見つかってみたり。
夜明けの小道を手を繋いで帰ったり。時には兄さんが眠そうな弟を背負って帰ったり。ムニャムニャ兄さんの背中あったかーい……って、この、なんだこのラブラブ兄弟めー! 萌える!!

しかしそんな大好きなお兄ちゃんは、あることが原因で四年前に自殺。以後、残された元述は厳格な父親の元で陰鬱な日々を送ることに――
ええいもう薄幸ッぷりも大概にしときなさいよこの別嬪さんが!
「私が側にいるではないか」なんて言っておいて、弟残して自殺しちゃうなんて兄さんもどうなの。おかげで元述の精気のない表情ときたら、儚げな風情でたまらないわって、いえ、その。(ダメ感想)
でも元述はやっぱりおでこ出してた方が可愛いわよ! 髪を伸ばしているのも可愛いっちゃ可愛いけど、やっぱりあの丸くて大きな目をちゃんと見せてくれた方がいい。前髪伸ばしてるとぱっちりお目目が半眼になってるんだものさ〜。将軍が西洋に行っちゃって鬱屈してる時(十三巻)みたいな目つきになってるわよ。半眼というか、伏眼がちになるので妙な色香を醸し出すという効果もあるのだが。
元述はどうやらさらさらストレート(美少女ヒロインの記号)(しかもつやつやキューティクル)らしいので、前髪伸ばしていると目にかかって鬱陶しいだろうさ。

「私は長く伸びた彼の前髪が嫌いだった。
 いつも彼の目にチクチクと刺さり彼を煩わせているから。
 その髪は切らないのですか? と訊ねると、決まって彼はこう答えるのだ。
 『ははは、そんな暇があるなら剣の腕を磨くさ』
 でもいつかはその髪のせいで、涙がこぼれてしまうかもしれない。
 私はそれが心配で――」

そしてチンダルレは元述ぼっちゃまのために髪留めを買って来るのだった。
「元述外伝・完」(終わるな)

気をとりなおして……

それにしても、元述と快惰天にそんな因縁があったなんて!
「文秀と元述の出会い」だなんて煽っておいてむしろそっちがメインですかい! ああんだまされたわ!
でもイイ……その因縁すっごくいい! これを読んだ後に十一巻の快惰天との対決を読むと、妄想世界で色んな物語が花開きそうなんです。ぶっちゃけ、快惰天→元述で。
まあ、自分にトマホーク殺形刀(語呂がいいので勝手にそう呼んでいる)ぶちかましたあの剣士が、月夜の草原でうふふアハハなあの少年と同一人物だと快惰天が知ってたのかどうかはわかりませんが。でも「また遊ぼう」だし。
元述と「遊ぶ」ために人里へ繰り出した快惰天、というシチュで一つ。
ああ、あの無邪気にかくれんぼをした二人が後にあんなにも壮絶な殺し合いをするなんて……

ところで何故にかくれんぼの鬼がそんなに偉そうなのですか?
「私の勘はかなり鋭いぞ!」ってお前それはウソだろさっき一服盛られてたやん、みたいな。どっちかというととろいやん、って。これがBL漫画なら薬で痺れたところを襲われてあんな事やこんな事されてますよ。そこへ颯爽と助けに現れたのは――!! エッ、それが文秀将軍との出会いだったのね、納得! みたいな妄想をするじゃないですか。文元ファン的に。
幸いGXはまっとうな青年誌なので、文字通りピンチも自力で切り抜けてますけど。
何にせよ、元述たんが無事でようござんした。草葉の陰で兄上もホッと胸を撫で下ろしてるよ!

「お礼」と言われて白粉やら石鹸貰ってたときに、「うちに女は居ないのに」なんて不服げな顔をしておりましたが、お前が使えば無問題だろと突っ込んだ元述ファンはきっとワタシ以外にも大勢いるに違いない。むしろ「きっとお気に召すと思いますよ」は元述本人に言ったんだよ!
ああでも白粉なんか使わなくても元述の肌は白くてキレイよ……といつまでも世迷い言は尽きないわけですが、そろそろ本題へ入りましょう。

ええ。文秀将軍との運命の出会いですよ。
運命のというか、出会いのエピソード自体はさらっと触れてるだけだけど、元述にとっては人生の節目というか、家族も故郷も喪って、精神的に路頭に迷ってるところへ現れて、求心力抜群のセリフでさっと心を掴んでしまったという……何この美味しいトコ取りな人は。
そりゃあこのタイミングで、尊敬する兄さんと同じセリフで口説かれたら(口説きなのかよ)ぐらっと来ちゃうでしょうが。しかも兄さんと違って将軍は自殺なんてしそうにないし。この人にだったらついていってもいいかも? ってうっかり思っちゃうじゃない!
まあ、結果的には将軍も元述のこと置いて行っちゃうんだけどね、数年後。
夢も国も喪って、路頭に迷っているところに現れた阿志泰について行ってしまうのです。元述……懲りない子……。

真面目な話をすると、悪獣と人間の戦いの歴史って実は結構浅かったんですね。元述の人生よりも短期間の間にあった事なんだ。土着の妖怪じゃないって事なんですかね。月から来たとか言ってるし。エイリアンだったのかー。
いやーワタシ、もっとずっと昔からいる天敵みたいなものかと思ってた。解慕漱が王位についてから本腰いれて悪獣征伐を始めたんで、この時代に表面化しただけで、ずっと昔から人間にとっての脅威だったのかと。

ラストいつの間にか元述が殺形刀手にしてますけど、あの剣は一体どこで手に入れたんだ……その辺はさっぱり出てこなかったなあ。適当にその辺の武器屋さんで買ったのかしら。
軍の支給だったりして……花郎はみんなあれを持ってたりして……。
衣装もこの頃から一人だけ違うし。あれは〈郎〉だからみんなとは別にしてあるのかと思ってたよ! あのマフラーひらひらは! 可愛くていいけどさ。

イヤしかし、色んな元述が見られて楽しかった。弟属性ってだけでも色んな妄想の種が芽吹きそうな感じです。
お盆に一緒にお墓参りに行って兄にたたられる将軍とか。(結局文元前提なのだった)