元述「英實、起きてるか?」
英實「元述か? おお、起きてる。入っていいぞ」
元述「邪魔するぞ。……なんだ、また何か描いてるのか。新しい発明か」
英實「んー、これはまだアイデアの段階だな。何か用か?」
元述「……ああ、なんというか、相談というか、意見を聞きたいんだが」
英實「何かあったのか?」
元述「……昨日、将軍が修練場に来られて、重要な任務だと異人街の市場を視察なさったんだが」
英實「へえ、なんだろう。最近は銃器類の密輸入が問題になってるって聞くから、それ関係かな」
元述「俺も似たような事を考えた。それで、一戦あるかもしれないと気を引き締めていったんだが」
英實「うんうん。……あ、ちょっとそこのコンパス取ってくれ。でも珍しいな。そういうのは捕盗庁の管轄だろう。将軍は滅多に横から口を出したりしないじゃないか」
元述「これか? ……それは確かにそうなんだが、現場を取り押さえる事になると、逃走された場合を考えてどうしても大人数を配置しなければならん。その点、幽霊部隊は隠密行動に手馴れているし、個々の戦闘力も高いからな。代わりに、俺が将軍の護衛として傍につくよう呼ばれたんだろうと思っていた」
英實「まあ、昼間から市場で大掛かりな捕り物なんてしたら、民間人を巻き込む恐れもあるしなあ。少数精鋭でってことか。で、どうだったんだ。任務は成功したのか?」
元述「それが、特に誰かを捕まえたとか、禁制品を押収したとか、そういう報告は無かったんだ」
英實「へえっ、それじゃあ何しに行ったんだ?」
元述「俺にもよくわからない。将軍に訊ねても困ったような顔をなさって、はっきりと答えては下さらなかった。ただ、店を回りながら、何か目に止まるものがあれば言えとおっしゃるので、異変があれば見逃さぬようにと、注意深く見て回ったつもりなんだが……」
英實「何もおかしなことはなかったと」
元述「ああ……それで、少し腑に落ちなくてな」
英實「でもさ、そうした捕獲任務ならお前のほうにも何か説明があるんじゃないか? 何もないって事は、単にお前を護衛にして出かけたかっただけなんだろ」
元述「やはりただ護衛役が欲しかっただけなのかな」
英實「ただの護衛っていうか……お前が良かったんだろ」
元述「それはもちろん、幽霊部隊にも引けは取らない働きはして見せるが。……しかし将軍は敵を騙すにはまず味方から、の人だからな。油断ならないぞ。海へ行ったのだって……」
英實「海?」
元述「ああ。市場を見て回った後、海へ行ったんだが、その時もこの景色をどう思うかと言うような事を」
英實「ちょっと待て」
元述「もしかしてこの浜で禁制品の取引が密かに行われているのかと、怪しい場所が無いか目を凝らして見渡してみたんだが」
英實「だから、ちょっと待て。将軍と二人で、海へ行ったのか?」
元述「ああ。市はもういいからとおっしゃって」
英實「幽霊部隊は傍いなくて、お前を護衛にして?」
元述「そうだが?」
英實「二人だけで?」
元述「だからそう言ってるだろ」
英實「ちょっと待って。えーと……」
元述「さっきから何回待たせば気が済むんだ」
英實「最初に話を戻すけどな、お前、重要な任務だって言われたそうだけど、将軍は本当にそう言ったのか? 最初になんて言われたのか、正確に思い出してみろ」
元述「言った。突然花郎の修練場に来られて、『大事な用件だ』とはっきりおっしゃったぞ」
英實「『任務』だとは言ってないんじゃないか?」
元述「任務でなければ、昼間俺を呼び出すどんな用事があるって言うんだ?」
英實「……えーと、それで、市場を見て、その後海へ行って、二人で海を眺めた?」
元述「だから、さっきからそう言ってるだろう。もっとも途中からカモメのせいで、周囲を見るどころではなくなったが」
英實「カモメがどうした!」
元述「あの、カモメ風情が、将軍が買ってくださったバケットを掠め取ろうとしたんだ! あいつは鳥のくせに凶悪だな! あの隙の無い動き、獲物を狙う目付きといい、焼き魚を狙う猫の如しだぞ。もしかして先祖が猫なんじゃないか。にゃあにゃあ鳴くし」
英實「にゃあにゃあ鳴くのはカモメじゃなくてウミネコだ。話の腰を折るな」
元述「そうなのか!? ほんとに猫だったのか!?」
英實「いや、カモメの仲間だって。まごうことなく鳥だ。それよりなんだ、バケット? 将軍に買ってもらっただって?」
元述「ああ、将軍のお話では、西洋の饅頭のようなものらしいぞ。いや、餅の方が近いのかな? かなりでかくて、食べごたえが」
英實「任務の最中に買い食いなんかするか? 本当に任務なのか?」
元述「それは……! あ、あまりに芳しい匂いがしたものだから、つい……! それに将軍も一緒に食べるからと……構わぬとおっしゃって、だから……!」
英實「海で景色を見ながら一緒に食べたんだな?」
元述「ああ……。イカ墨みたいに真っ黒な飲み物もあった。あれは苦いな……香りはなんとも不思議に美味そうだが」
英實「………………はあ」
元述「? 何故ため息を?」
英實「つまり、話を整理すると、昼に将軍が自分で迎えに来て、一緒に市場へ行き、露店を眺め歩いたあと、海まで足を伸ばして、一緒に景色を眺めながら同じものを食べたと」
元述「簡単に言えばそうだが……腑に落ちんだろ?」
英實「いや、俺にはとてもはっきり理解できましたが」
元述「えっ!? どういうことなんだ、教えろ!」
英實「自分で考えてくれ。……はぁ~あ。馬鹿らしい、脱力したわ……。もう寝る……」
元述「ね、寝るなー!!」
viasxrsqs40137 Eメール URL 2010年12月30日(木)21時07分 編集・削除
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