文秀「……へっくし!」
解慕漱「どうした、風邪か。お前が風邪をひくとは珍しい。そういうのを鬼の撹乱というんだぞ」
文秀「うるせえな、俺だってたまには風邪くらいひくんだよ」
解慕漱「軍人は身体が資本だ。今お前に倒れてもらっては困るのだからな、きちんと養生してくれよ」
文秀「ああ、別にたいした事はねえよ。さすがにこの時期は海風が身に凍みただけだ」
解慕漱「海? なんだってまたこの寒い季節に海になんぞ行ったんだ?」
文秀「先月末に、西洋からの船が港に入っただろう。それで、昨日は執務を早めに切り上げて、元述を連れて市を見に行ったんだ」
解慕漱「私用でか」
文秀「当たり前だろ。何かあいつの気に入りそうな品があればと思ったんだがなー」
解慕漱「ああ、そういえばもう十二月に入ったのだったな。それで、好きなものを買ってやろうとしたのか。昨日が誕生日だったのか?」
文秀「いや、違う。そもそも誕生日が十二月の何日かまだ知らんのだ」
解慕漱「おいおい、それはとっくに知っておくべき事だろう。何故その場で訊かないんだ」
文秀「本人に訊いたら、俺が誕生日祝いをする事がばれちまうだろうが!」
解慕漱「なんだ、内緒にしておきたいのか」
文秀「吃驚させて、反応が見たいじゃねえか」
解慕漱「お前はそういうのが好きだなあ、つくづく……」
文秀「いいだろ、別に」
解慕漱「別に悪いとは言わないよ。それで、元述が喜びそうなものは何か見つかったのかい?」
文秀「……それがどうも、単に俺の警護として駆り出されたんだと思ってたらしくてな……」
解慕漱「執務中に抜け出すからだろうが。元述だって、訓練中だったんじゃないのか?」
文秀「早めに切り上げたって、言ったろ! 元述には、大事な用件だと言って抜けてもらったんだ」
解慕漱「大事な用件ねえ。それだけじゃ、元述が勘違いしても仕方無いんじゃないか?」
文秀「しかし、ただ二人で市を見て回っただけだぞ? 一体何の任務だっていうんだそれが!」
解慕漱「市で輸入品を見て回っただけか? 他にもっと恋人らしい事はしてやらなかったのか?」
文秀「ほとんど俺が一人で見てたんだがな……。あいつ、西洋の文化には興味ないのかな。食べ物はそれなりに気に入ったようなんだが」
解慕漱「ほうほう。夕食を共にしたか」
文秀「いや、夕食っていうか……パン屋の匂いに誘われてやがった」
解慕漱「パン屋ねえ。なんと微笑ましい」
文秀「焼きたては美味いからな。まあそれで、焼きたてのバケットを一本ずつ買って、屋台でコーヒーも買って、すぐ側の海岸で海を見ながら食べたんだが、寒くてなあ……」
解慕漱「……それなりに、楽しそうではあるが……微妙な図だな。黄昏ているというか」
文秀「いいんだよ、それはそれで! 夕日も見たしな! 元述は『カモメの顔って近くで見ると凶悪ですね』とか言ってたがな! いいからお前は座ってろ隣に! カモメとバケットの奪い合いをするんじゃねえ!」
解慕漱「そうだよなあ。そこで夕日を見ながら『綺麗ですね』とか言ってくれないと、『お前の方がもっと綺麗だよ』と返せないものなあ」
文秀「いや別に、そんなお約束がやりたかったわけじゃあないんだが」
解慕漱「波間をきらきら飛沫を上げながら追いかけっこしたり、砂に『好き』って文字を書いて波に消されたり、巻貝の貝殻に耳を当てて潮騒を聞こうとしたらヤドカリが出てきたり、そんな事もしなかったか?」
文秀「解慕漱よ……お前の恋愛知識(?)ってもの凄くベタに偏ってるんだな」
解慕漱「王の道と書いて〈王道〉というくらいだからな」
文秀「それは違うだろ」
viasxrsqs27920 Eメール URL 2010年12月30日(木)18時41分 編集・削除
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